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転職・退職のときの退職金と企業年金|企業型確定拠出年金(企業型DC)の移換手続きと注意点
① 退職金は法律で決まっているもの?|退職金と企業年金の基本
退職金は、会社の規程の定めによるもの
退職金は「退職したら誰にでも支払われるもの」と思われがちですが、会社に退職金制度を設けることを一律に義務づける決まりはありません。労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する会社は就業規則を作成して届け出ることとされており、退職手当の定めをする場合には、適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払の方法、支払の時期を就業規則に書くこととされています。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のQ&Aでも、退職手当は「定めをする場合」に記載する事項として整理されています。
つまり、退職金が出るかどうか、いくらになるかは、勤務先の就業規則や退職金規程で決まるということです。入社時の労働条件通知書や就業規則で、退職金の有無や条件を確認しておくと安心です(労働条件の確認は内定後の労働条件通知書の確認ポイントをご覧ください)。
企業年金とは
企業年金は、会社が従業員のために用意する、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せされる年金制度です。厚生労働省の案内で代表的な制度として示されているのは、次の2つです。
| 制度 | 基本的なしくみ(厚生労働省の案内より) |
|---|---|
| 確定給付企業年金(DB) | 事業主が従業員と給付の内容をあらかじめ約束し、その内容に基づいて給付を受ける企業年金です。実施方法には規約型と基金型があります |
| 企業型確定拠出年金(企業型DC) | 掛金を事業主が出し、掛金と運用の成果の合計額をもとに将来の給付額が決まる制度です。加入者が自分で運用商品を選びます。規約によっては、加入者本人が上乗せして拠出する「マッチング拠出」もあります |
勤務先に退職金制度のほかに企業年金があるのか、あるとすればどの種類なのかは、会社によって違います。転職前に、自分がどの制度に入っているかを把握することが最初の一歩です。
② 退職金を受け取ったときの税金の基本
退職金にかかる所得税は、毎月の給与とは別の「退職所得」として計算されます。国税庁のタックスアンサー(番号1420)では、次のように説明されています。
- 退職所得控除額:勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数」(80万円に満たない場合は80万円)、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」とされています。勤続年数の端数は1年に切り上げます
- 退職所得の金額:原則として「(収入金額-退職所得控除額)×2分の1」で計算します。役員等の場合など、取扱いが異なるケースがあります
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出した場合:支払者が所得税等を計算して源泉徴収するため、原則として確定申告は不要とされています
- 申告書を提出しなかった場合:退職金の支払金額に20.42%の税率で源泉徴収され、確定申告で精算することになります
退職金を受け取る予定がある場合は、退職前に会社の担当者から「退職所得の受給に関する申告書」の案内があるかどうかを確認しておくとよいでしょう。この申告書は、退職金などの支払を受けるまでに、支払者(会社)へ提出するものとされています。個別の税額は、勤続年数や退職金の額、ほかの所得によって変わるため、この記事では計算しません。国税庁の案内や税務署でご確認ください。
年の途中で転職したときの年末調整や住民税は別の話です。年の途中で転職したときの税金で整理しています。
③ 企業型DCは、転職・退職のときに何が必要?
企業型DCの資産は、会社の退職金とは別に、加入者ひとりひとりの名義で管理されている資産(個人別管理資産)です。厚生労働省の案内では、企業型DCの掛金は事業主が出すのが基本とされており、転職や退職をしたからといって、その資産が自動的に消えるわけではありません。
ただし、転職・退職で企業型DCの加入者資格を失ったときは、資格を失ってから6か月以内に、資産の移換などの手続きが必要とされています。iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)では、次のいずれかを行うよう案内されています。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)への移換
- 転職先に企業型DCがある場合の、他の企業型DCへの移換
- 確定給付企業年金(DB)等(通算企業年金を含む)への移換
- 脱退一時金の要件を満たす場合は、その請求
関東信越厚生局の文書にも、退職して資格を失った場合は、退職した方が自ら個人別管理資産の移換手続を行うこととされており、退職後6か月以内に行われなかった場合は、国民年金基金連合会に移換(自動移換)されると書かれています。
④ 移換先の選択肢と、放置したときの自動移換
主な移換先
厚生労働省の「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」のページでは、企業型DCから移せる先として、iDeCo、通算企業年金、転職先の企業型DC(導入がある場合)、転職先のDB(導入があり条件を満たす場合)が示されています。状況別に整理すると、次のようになります。
| 転職先の状況 | 考えられる移換先(公式の案内より) |
|---|---|
| 転職先に企業型DCがある | 転職先の企業型DCへの移換ができる場合があります。加入手続きや移換の詳細は、転職先の担当部署に確認します |
| 転職先に企業型DCがない・次の勤務先が決まっていない | iDeCoへの移換が一般的な選択肢です。iDeCoの運営管理機関を選んで、移換の依頼をします |
| 転職先にDBがある | 条件を満たす場合は、DBへの移換ができるとされています |
| 資産が少額など、一定の要件を満たす | 脱退一時金を請求できる場合があります。要件は細かく、iDeCoに加入できる人は対象外になるなど制限があるため、運営管理機関で確認してください |
どの運営管理機関を選ぶか、どの運用商品にするかは、この記事ではおすすめしません。手数料や商品の内容は機関ごとに異なるため、公式の資料で比較してください。
放置すると「自動移換」になる
6か月以内に手続きをしないと、資産は国民年金基金連合会に自動的に移されます。iDeCo公式サイトでは、自動移換された場合の主な影響が次のように案内されています。
- 資産が運用されません
- 管理手数料がかかります(手数料は自動移換された資産から差し引かれ、資産が0円の場合は負担がないとされています)
- 自動移換されている期間は、老齢給付金を受け取るための通算加入者等期間に含まれないため、受け取れる年齢が遅くなることがあります
手数料の金額は、移換の際や管理の期間などで項目ごとに定められています。金額は変更されることがあるため、iDeCo公式サイトの最新の案内で確認してください。なお、自動移換になっても、手続きをすればiDeCoなどへ移すことはできるとされていますが、その間の運用は止まり、手数料もかかります。そのため、退職前から移換先を決めておくのが、後々の手間を減らすことにつながります。
iDeCo公式サイトでは、企業型DCの資格喪失後6か月以内にiDeCoの加入者となったことが確認できた場合などは、移換の申し出をしなくてもiDeCoへの移換処理が行われるようになったとも案内されています。対象になる条件は、公式サイトでご確認ください。
⑤ 手続きの流れと、退職前に確認しておくこと
iDeCo公式サイトの案内などをもとに、一般的な流れを整理します。書類の名称や運用は、運営管理機関によって異なる場合があります。
- 退職前:勤務先に、退職金制度や企業年金の有無・種類を確認します。企業型DCがある場合は、加入者向けのサイトなどで、自分の資産の状況と、退職時の手続きの案内を確認します
- 転職先が決まっていれば:転職先に企業型DCやDBがあるかを確認します(入社時の案内については入社時に必要な書類と手続きも参考にしてください)
- 移換先を決める:転職先の企業型DCに移すか、iDeCoに移すかなどを決めます
- iDeCoに移す場合:iDeCoの運営管理機関を選び、連絡のうえ、「個人別管理資産移換依頼書」などの書類を提出します。iDeCoに加入して掛金も拠出する場合は、加入の申出書類もあわせて提出します。オンラインで手続きできる機関もあります
- 期限の確認:資格を失ってから6か月以内に手続きが完了するよう、早めに動きます
iDeCo公式サイトの案内では、iDeCo加入者が転職先の企業型DCに加入する場合は、iDeCoの運営管理機関に加入者資格喪失届を提出する必要があるとされています。iDeCoの掛金を引き続き払い続けたままにならないよう、転職先に企業型DCがあるときは、iDeCoの扱いも確認しておくとよいでしょう。
退職の時期を決めるときは、月末の退職になるかどうかなど、会社の手続きの時期とも関係します。退職日までの進め方は退職の切り出し方・円満退職のコツ、退職の意思を伝えたあとに引き止められたときは退職を伝えたら引き止められたときもあわせてご覧ください。
⑥ 2026年に関わる制度改正
確定拠出年金は、2025年の制度改正が関わる年です。厚生労働省の「2025年の制度改正」のページで確認できた範囲では、次のとおりです。
- 2026年4月1日施行:自動移換に関する事業主の説明時期が見直され、資格喪失が見込まれるときなどに説明を行うことが義務づけられます。また、企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金を事業主掛金以下に抑える制限が撤廃されます
- 2026年12月1日施行予定:企業型DCの拠出限度額が月額5.5万円から6.2万円に引き上げられます(厚生労働省のリーフレット)。会社員などのiDeCoの拠出限度額は、企業年金の有無による差が解消され、企業年金と共通の月額6.2万円(企業年金等がある人は合計で6.2万円が上限)とされています。また、iDeCoに加入できる年齢の引き上げも予定されています
ページには、iDeCo関連の事項は施行予定であり、確定した施行日ではないとの注意も書かれています。自分の掛金の上限は、勤務先の規約や事業主の拠出額によって変わるため、最新の情報は勤務先の案内でご確認ください。
⑦ つまずきやすい点と、確認できる窓口
- 企業型DCに入っているか分からない:給与明細や、入社時の資料、運営管理機関から届く通知を確認します。分からなければ勤務先の担当部署に問い合わせます
- 手続きの期限が分からない:資格喪失日と、運営管理機関の案内を確認します。数え方で迷ったら、窓口で確認します
- 退職金の税金が心配:「退職所得の受給に関する申告書」の提出方法を会社に確認し、不明な点は税務署に相談します
退職金も企業年金も、金額が大きくなる場合があり、手続きの期限もあります。「自分の勤務先にどの制度があるかを調べる」「退職前に移換先を決める」「期限を窓口で確認する」の3点から始めると、進めやすくなります。
退職金や企業年金のしくみは、勤務先の規程によって異なります。一方で、転職先を探す段階で、条件面を含めて第三者に相談してみるのも一つの方法です。ユメキャリAgentは、広告主の紹介によると、大手企業の現役の面接官が運営する転職エージェントとのことです。ただし、退職金・企業年金・税金の手続きは、勤務先の担当部署、運営管理機関、税務署などの公式の窓口でご確認ください。サービスの内容、対象、利用条件は、公式サイトでご確認ください。
ユメキャリAgentについて見てみる →📌 まとめ
- 退職金は、法律で一律に支給が義務づけられているものではなく、勤務先の就業規則・退職金規程の定めによる。有無や条件は、入社時の書類や規程で確認する
- 退職金の所得税は退職所得として計算され、「退職所得の受給に関する申告書」を出した場合は、原則として確定申告が不要とされている(国税庁)
- 企業型DCは、資格を失ってから6か月以内に、iDeCo・転職先の企業型DC・DBなどへ移す手続きが必要。期限内に手続きをしないと国民年金基金連合会へ自動移換される
- 自動移換されると、資産が運用されず、管理手数料がかかり、受け取れる年齢が遅くなる場合がある
- 2026年4月・12月に確定拠出年金の制度改正が関わる。期限や金額は、勤務先と運営管理機関で最新の情報を確認する
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第89条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A 就業規則で、記載が必須な事項はありますか?
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/syuugyoukisoku/q4.html - 国税庁「番号1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm - 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html - 厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/portability.html - 厚生労働省「2025年の制度改正」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html - 厚生労働省リーフレット「企業型DCの拠出限度額が5.5万円から6.2万円に引き上げられます」
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001739467.pdf - iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「退職者・転職者の方へ(企業型DC加入者が転職・退職したとき)」
https://www.ideco-koushiki.jp/retirement/ - 関東信越厚生局「確定拠出年金の資格喪失者への移換手続の周知についてのお願い」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/gyomu/bu_ka/nenkin/000105322.pdf
※2026年10月時点で確認した内容です。制度や案内は改正・改定されることがあります。最新の情報は、各公式サイトや、勤務先・運営管理機関・税務署の窓口でご確認ください。
※本記事は、転職・退職のときの退職金と企業年金について、公的機関の公表情報をまとめた一般的な情報です。個別の金額・税額の計算、運用商品の選択、投資や資産運用に関するご相談は、勤務先の担当部署、運営管理機関、税務署、専門家などにお尋ねください。